~第4章~千恵子の告白は続く。 「わたくしは、オババのもとに行き、なんとか、その秘伝の椿油をわけてもらえないかと、頼み込みました。 しかし、オババの答えは、「この、椿油は蛇神様にご祈祷して、特別な霊力を賜ったもの。とても、おまえのような、素人に扱える代物ではない!」と、にべもないものでした。 お金は、いくらでも出します!どうか、お願いですから、その、椿油を分けてくださいませ!と、わたくしは、土下座までして頼み込んだのです。 それを見た、オババは「千恵子よ、世の中には、お前と同じ年頃で、明日の米にも困り、苦界へ売られていく若いおなごが、山ほどおるのじゃ。お前のように、何不自由ない身の上でありながら、 なんという、欲深い娘じゃ。さっさと、立ち去るが身のためぞ!」 と、言い放ったのです。 わたくしは、目の前が、カアッと赤くなるのを覚えました。 その瞬間から、わたくしは、悪魔に心を売ってしまったのです。 「どうしても、渡さぬと言うなら、奪い取るまで」と、叫ぶと、 オババに駆け寄り、首に巻いた、オババの手ぬぐいで、千切れよとばかり、オババの首を締めたのです。 オババは、ギャッと叫ぶと、もがき苦しみながら、わたくしに恐ろしい呪いを宣告したのです。「ち、千恵子よ。必ずや、お前に取り付いて、呪い殺してやる。お、覚えておくが良い。必ず・・」 そう言うと、白目を向いて、オババは事切れておりました・・・」 桃和香は、驚愕のあまり、わなわなと、震える声で言った。 「そ、それであなたは、あのような、オババの姿になってしまったのですか?」 千恵子は答えた。 「そうです。でも、オババの呪いは、それだけではなかったのです。」 「そ、それはいったい??」 「わたくしは、オババを手にかけてまで、奪い取った椿油を手に取ると、胸は高鳴り、身も震えるばかりでした。すぐかたわらに、 オババの枯れ木のような死体があるにもかかわらず、あぁ、なんという、欲望にくらんだわたくしであったことでしょう。 オババの家の、欠けて曇った、鏡の前に立ち、わたくしは、髪をほどいて、椿油をたっぷりと、塗りつけました。すると、見る間に 赤茶けた髪は、黒々と艶やかに輝き、ついに、欲するものを手に入れた喜びで、わたくしは、躍り上がらんばかりでした。」 ジャンル別一覧
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