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桃の缶づめ

桃の缶づめ

~第4章~

~~~~呪いの椿油 第4章~~~~


呪いの椿油挿絵2

挿絵 千恵子さん作


千恵子の告白は続く。

「わたくしは、オババのもとに行き、なんとか、その秘伝の椿油をわけてもらえないかと、頼み込みました。

しかし、オババの答えは、「この、椿油は蛇神様にご祈祷して、特別な霊力を賜ったもの。とても、おまえのような、素人に扱える代物ではない!」と、にべもないものでした。

お金は、いくらでも出します!どうか、お願いですから、その、椿油を分けてくださいませ!と、わたくしは、土下座までして頼み込んだのです。

それを見た、オババは「千恵子よ、世の中には、お前と同じ年頃で、明日の米にも困り、苦界へ売られていく若いおなごが、山ほどおるのじゃ。お前のように、何不自由ない身の上でありながら、
なんという、欲深い娘じゃ。さっさと、立ち去るが身のためぞ!」
と、言い放ったのです。

わたくしは、目の前が、カアッと赤くなるのを覚えました。
その瞬間から、わたくしは、悪魔に心を売ってしまったのです。

「どうしても、渡さぬと言うなら、奪い取るまで」と、叫ぶと、
オババに駆け寄り、首に巻いた、オババの手ぬぐいで、千切れよとばかり、オババの首を締めたのです。

オババは、ギャッと叫ぶと、もがき苦しみながら、わたくしに恐ろしい呪いを宣告したのです。「ち、千恵子よ。必ずや、お前に取り付いて、呪い殺してやる。お、覚えておくが良い。必ず・・」

そう言うと、白目を向いて、オババは事切れておりました・・・」


桃和香は、驚愕のあまり、わなわなと、震える声で言った。
「そ、それであなたは、あのような、オババの姿になってしまったのですか?」

千恵子は答えた。
「そうです。でも、オババの呪いは、それだけではなかったのです。」

「そ、それはいったい??」

「わたくしは、オババを手にかけてまで、奪い取った椿油を手に取ると、胸は高鳴り、身も震えるばかりでした。すぐかたわらに、
オババの枯れ木のような死体があるにもかかわらず、あぁ、なんという、欲望にくらんだわたくしであったことでしょう。

オババの家の、欠けて曇った、鏡の前に立ち、わたくしは、髪をほどいて、椿油をたっぷりと、塗りつけました。すると、見る間に
赤茶けた髪は、黒々と艶やかに輝き、ついに、欲するものを手に入れた喜びで、わたくしは、躍り上がらんばかりでした。」



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